
10km走れるようになった。 じゃあ、次は「大会」に出てみるか?
そう思った瞬間、急に不安が襲ってきます。 「遅いと迷惑なんじゃないか?」 「ガチ勢ばかりで、浮くんじゃないか?」 「手続きとか、当日の流れとか、全然わからない……」
わかります。私もそうでした。 しかし、結論から言います。その心配は99%不要です。
私が初めて参加した「Garmin Run(桜木町・赤レンガ倉庫周辺)」の実体験をもとに、40代初心者が知っておくべき「大会の歩き方(運用マニュアル)」を共有します。
1. 導入:エントリーボタンは、誰かと一緒に押せ
最初の一歩が怖いなら、「道連れ(ペア・ラン)」を作るのが最強のソリューションです。
私は友人を誘ってエントリーしました。 一人だと「行きたくないな、怖いな」となるのが、誰かと一緒だと「大人の修学旅行」に変わります。 会場のブースを見たり、アップをしたり、「終わったら何食べる?」と話したり。 これだけで、心理的ハードルは劇的に下がります。
実際の会場は、テレビで見るようなピリピリした雰囲気ではありません。 仮装している人、お喋りしながら走るグループ、もちろん速い人もいますが、全体的には「ランニング好きが集まるフェス(お祭り)」です。 楽しんだもん勝ち。それが市民大会のリアルです。
2. 【重要】PM的・スタート前の「デプロイ準備手順」
走力よりも重要なのは、「当日、スタートラインに無事に立つこと」です。 初心者が現場で慌てないための、5つのチェックポイントをまとめました。
① 情報伝達(メールとスパム)
大会の案内状(ハガキ)が来ないイベントも増えています。全てはメールです。
- 罠: エントリー完了メールや詳細案内が「迷惑メールフォルダ」に入っていないか?
- 確認: 開催1週間前には必ずチェックし、自分の「ウェーブ(スタート時間区分)」と「集合場所」を把握してください。これを知らないと当日パニックになります。
② 計測プロトコル(チップか、ウォッチか?)
記録の計測方法も大会によって異なります。
- ICチップの場合: ゼッケンや靴にチップを装着します。これを忘れると記録が出ません。
- 自前ウォッチの場合: 私が出たGarminのイベントのように、「自分の時計で測ってね」というパターンもあります。
- 対策: 当日の朝、「どうやって記録するんだっけ?」と焦らないよう、要項を必ず確認しましょう。
③ 熱管理(サーマル・マネジメント)
冬の大会は寒いです。でも、走り出すと暑くなります。
- 着替え: 東京マラソン級の巨大大会でなければ、着替えスペースは「20〜30分」見ておけば大丈夫です。
- 対策: 会場に着いてから全部着替えるのではなく、ウェアを中に着込んでおき、「上着を脱ぐだけ(Ready to Run)」の状態にしておくとスマートです。余った時間はアップに使えます。
④ 排泄管理(トイレ問題)
- 現状: スタート30分前〜直前は、どこの大会でもトイレが混みます(ピークタイム)。
- 対策: 会場入りする前の駅やコンビニで済ませておくのがPMのリスク管理。会場で行くなら、早めに済ませておきましょう。
⑤ エネルギー管理(3時間前ルール)
- 不要: 10km程度なら、途中のエネルギー補給(ジェルなど)はいりません。
- 必須: ただし、スタート時のガス欠を防ぐため、3時間前には消化の良い食事(おにぎり等)を済ませておきましょう。直前に食べると横腹が痛くなります。
【コラム】遠征バッグの「必須要件」はこれだ
大会当日の荷物は、想像以上に嵩張ります。 特に冬場は防寒着がかさばるし、何より「レース用シューズ」と「行き帰りの靴」を履き替える場合、汚れたシューズをどこに入れるかが問題になります。
私が現在愛用しているのは、実はロードバイクブランド「Rapha(ラファ)」のウィークエンドバッグ(現在は廃盤)です。自転車用ですが、これがランニング遠征に最強でした。
PM的・選定要件:
- シューズ専用区画(Isolation): メインの荷室とは別に、底部分などにシューズ専用のポケットがあること。ジップロックに入れて混載するのは、運用として美しくありません。
- ヘルメットが入るほどの容量(Capacity): 自転車用バッグはマチが広く、着替えやタオルを放り込んでも余裕があります。
- デザイン(UI): スポーティーすぎず、帰りに横浜の街(馬車道)を歩いても浮かないデザイン。
残念ながらこのRaphaのバッグは廃盤です。 なので、もし今から私が買い換えるとしたら……ランニングブランド「On」のバックパックや、同じくRaphaの「グランツールバッグ」あたりを狙っています。
これらは「シューズ収納エリア」が独立しているため、汚れた靴と綺麗な着替えを物理的に分離できます。 遠征バッグを選ぶ際は、ブランドよりもまずこの「シューズ分離機能」があるかどうかをチェックすることをお勧めします。
3. レース本番:アドレナリンという「バグ」に注意
いざスタート。ここで私はまたやってしまいました。
- バグ発生: 号砲と共に、周りが一斉に走り出す。歓声、音楽、雰囲気。
- 症状(アドレナリン過多):
- 「あれ? 今日は調子がいい気がする!」と勘違いする。
- 最初は混雑しているので、空いた瞬間に急加速して突っ込んでしまう。
- 結果(システムダウン):
- いつもより遥かに高いペースで入ってしまい、心拍数がレッドゾーンへ。
- 後半、足が止まり、地獄を見る。いつもより突っ込んだので、膝が痛い。
対策: 「最初の1kmは捨てろ」。 周りに抜かれてもいいです。自分の時計を見て、いつものペースを守ってください。 初めて出るイベントでの10kmは意外と長いです。前半の貯金は、後半の借金にしかなりません。
4. まとめ:全ては「焼肉」のために
ゴールした瞬間の達成感は、練習では味わえないものです。 「完走証」というログと完走メダルが手に入り、自信がつきます。
一度この経験をしてしまえば、もう「大会」は怖くありません。 「心理的安全性」が確保された私は、その後、近所の「鶴見川記録会」など、もっとローカルなイベントにも一人で参加するようになりました。これもまた楽しいんです。
でも、最初の大会の本当のハイライトは、ゴール後に待っていました。
「馬車道での焼肉と、キンキンに冷えたビール」
(鶴見川の場合は家の近くのスパで汗を流して、飲食エリアでビールを流し込んでおりますw)
全身の筋肉を使い切り、渇ききった体に流し込むビール。そして肉。 これは人生で一番美味い食事でした。 この「至極の体験」をするために、数千円のエントリーフィーを払う価値は十分にあります。
さあ、友人を誘って「ポチッ」とエントリーしてみましょう。 苦しいのは一瞬、ビールの旨さは一生の思い出です。
【オマケ】井上咲楽さんの「がんばれ」と、残酷なログ
最後に一つだけ、笑える(笑えない)恥ずかしい話を。
このGarminのイベントには、ゲストランナーとしてタレントの井上咲楽さんも参加されていました。彼女はめちゃくちゃ速いので、周回コースで私は2回抜かれました(笑)。
抜かれざま、彼女は私に向かって、あの笑顔でこう言ってくれたのです。 「がんばれ!がんばれ!」
私は舞い上がりました。 「おお! 芸能人に応援された!」 アドレナリンが出て、自分では風のように颯爽と走っているつもりでした。
しかし後日、イベントの様子を撮影したYouTuberの方の動画を見て、愕然としました。 背景に映り込んでいた私は……。
「信じられないほどのへっぴり腰」でした。
腰が落ち、ドタドタと重そうに走る、今にも倒れそうなおじさん。 「え、これ俺!? 嘘だろ!?」
その瞬間、井上咲楽さんの「がんばれ」の真意を理解しました。 あれは「ナイスラン!」という意味ではなかったのです。 「おじさん! 死にそうだよ! 大丈夫!? 生きて!!」 という、生存確認に近い励ましだった(と勝手に思っていますw。いや、彼女はそんな意味で言っているわけではないのはわかってますが)
主観(気持ち)と客観(動画)のズレは残酷です。 この衝撃映像が、のちに私が「ベアフットシューズ」や「フォーム改善」に本気で取り組むきっかけになったのは、また別の話です。
(だからこそ言います。皆さんも一度、覚悟を持って誰かに走っている姿を撮ってもらうことをお勧めします。現実は厳しいですが、そこからしか改善は始まりませんから……)