たいち

走るPM 40代・IT企業勤務。 「気合で走る」をやめて、「データと生理学」で走ったら、苦しまずに?(苦しみながらも)走れるように。 運動音痴な中年が、サブ5を目指す「ランニング・プロジェクト」の記録です。

2026/1/29

第5話:雲の上を走るような衝撃。〜初めての厚底ランニングと、45歳に訪れた「全能感」〜

魔法の靴と、禁断の果実 日曜日。待ちに待ったその荷物は、夕方の配送で届いた。無機質な段ボールを開けると、真新しい靴箱が現れる。蓋を開けた瞬間、独特の化学繊維と新しいゴムの匂いが鼻をくすぐった。 手に取ってみて、そのボリューム感に驚いた。 今まで履いていたスニーカーの倍近い厚みがあるのに、持ってみると羽のように軽い。 指で白いソールを押すと、グニッとした確かな弾力が返ってくる。 街歩き用のスニーカーとは、もはや設計思想が根本から異なる「別の工業製品」だ。  私は居ても立ってもいられなくなり、玄関で紐を通し始 ...

2026/1/29

第4話:人間性能か、機材の差か。膝の激痛が教えた「厚底シューズ」という物理的解決策

「ドスッ、ドスッ」と重たい音を立てていた私の横を、風が通り抜けた。 ――時が止まった気がした。 すれ違ったその男の年齢は、おそらく私と同じ40代半ば。 だが、生物としての種別が違うのではないかと感じるほど、私とは何もかもが違っていた。 身体にピタリとフィットした黒いインナーに、白いランニングウェア。 手首には、青白く光る液晶画面を持つスマートウォッチ。 腕には闇夜に存在を知らせるLEDのアームバンド。 そして足元には、街灯の光を反射して輝く、鮮やかなネオンイエローの厚底シューズ。 何より衝撃だったのは、彼 ...

2026/1/29

第3話:金曜22時、街歩き用スニーカーで走り出した夜。3日目に訪れた「膝の激痛」と「衝撃の足音」

衝撃と衝動 4月某日の金曜日。 仕事が終わり、夕飯も落ち着いた22時。 私はついに、人生初となるランニング計画を実行に移した。 なぜこんな深夜帯なのか。答えは単純、リスク回避だ。 うかつに休日の昼間や夕方に走れば、近所の顔見知りに遭遇する確率は極めて高い。 もし私が、息を切らして無様な姿を晒しているところを見られたら? さらに、もしこの計画が三日坊主で終わってしまった場合、「あら山本さん、最近走ってないわね」などと噂されるのは絶対に御免だ。 それは私のちっぽけなプライドが許さない。 だからこその、闇夜に紛 ...

2026/1/29

第2話 「太ったおじさん」を受け入れるか、走るか。ベルトの穴が限界を告げた朝の決断

決断 走り始めようと思って、あれから2年が経ち 横浜市営地下鉄グリーンライン、日吉駅。私の住む街の玄関口であるこの駅で、その日、致命的なトラブルに直面していた。 「点検中」 地上から改札階へと続く長いエスカレーターの前に、無慈悲なカラーコーンが立っている。 その横にそびえ立つのは、長い階段のみ。 たいした段数ではない。以前の私なら、スマホを見ながら無意識に登りきっていたはずだ。 だが、今の私は違った。 半分を過ぎたあたりで、太ももから「限界だ」というアラートが鳴り始めた。 心臓が早鐘を打つ。 不織布マスク ...

2026/1/29

第1話:箱根駅伝を見ると走りたくなるけれど、外の寒さに負けてミカンを食べた話

静かなる危機 あれは、二年前の正月のことだ。自宅のこたつでぬくぬくしながら、蜜柑を片手にテレビを眺めていた。 画面の向こうでは、第1区のランナーたちが六郷橋に差し掛かっていた。 スタートから18キロ地点。 脱落者はまだいない。先頭集団は一塊になり、互いの呼吸や表情を読み合うような、張り詰めた牽制(けんせい)が続いている。 彼らの瞳は鋭く、まるで獲物を狙う狩人のように静かだ。 時速20キロを超えるスピードで走っているはずなのに、上半身は微動だにせず、ただ足だけが精密機械のように地面を蹴り続けている。 その ...