
ランニングを始めた当初、私は「自分を追い込んでゼーハー言わないとスタミナはつかない」と思い込み、毎回全力に近いペースで走っていました。 しかし、頑張っているわりにはいつまでも長い距離を走れるようにならず、それどころかすぐに疲弊して練習が続かなくなってしまった経験があります。
実は、マラソンの世界記録保持者エリウド・キプチョゲ選手のようなトップ選手ですら、練習の約8割は、喋れるくらいの「自分の心肺機能に対して余裕のある負荷」で走っているそうです。
彼らにとっての余裕あるペースはキロ4分前後と非常に速いものですが、大切なのは絶対的な速さではなく、自分にとって「楽だと感じるかどうか」という点にあります。
今回は、初心者が最短でスタミナを手に入れるために、なぜ高強度で追い込むよりも「楽なペースで走ること」が効率的なのか。その2つの理由と、具体的な実践方法をお話しします。
1. 理由①:楽なペースで走ると、体内でのエネルギー供給能力が向上する

楽なペースで走ることで、私たちの体の中にあるエネルギーを作る仕組みの性能が向上します。
高い強度でゼーハーしながら走ると、体はすぐにエネルギー切れを起こす糖質を優先的に使ってしまいます。これでは、長い距離を走り続けるための体質は作られません。
一方で、隣の人と会話ができるくらいの楽なペース(Zone 2と呼ばれる強度)で走り続けると、体は脂肪を効率よくエネルギーに変える機能を強化し始めます。
- 楽なペースで走る(zone2): 脂肪をエネルギー源として使い続ける体質に変わり、疲れにくくなる。
- 全力で走る(zone4): 糖質を使い切り、脂肪を燃やす仕組みが発達する前にバテて終わってしまう。
まずは低い負荷で走り、脂肪をエネルギーに変える回路を優先して鍛えることが、スタミナを作る土台となります。
2. 理由②:楽なペースは、持久力をつけるための「練習時間」を最大化できる
楽なペースが持久力をつけるのに効率的かどうか、練習時間の観点から考察してみました。 トレーニングの効果は、一瞬のきつさだけでなく「その強度でどれだけの時間、体を動かし続けたか」に大きく依存します。
きつい練習は体への負担が大きく、初心者が長時間続けることは困難です。 しかし、楽なペースであれば、1回の練習で走れる時間を大幅に増やすことができます。
- プランA:全力で走る(高強度) 非常にきついので、短時間で限界がきます。スピードを出す練習にはなりますが、脂肪燃焼を促すための刺激としては時間が足りません。
- プランB:楽なペースで走る(低強度) きつくないので、プランAよりも数倍長い時間、走り続けることができます。長時間動き続けることで、脂肪をエネルギーに変える回路をじっくりと刺激し続けることができます。
ターゲットとする「脂肪を使うトレーニング」を、無理なくしっかり継続できる低強度の方が、結果としてスタミナを強化する効率は高くなるのです。
3. 実践:ペースではなく「自分の心拍数」を基準に走る
では、具体的にどうやって練習すればいいのか。 最も重要な鉄則は、**ペースではなく「自分の心拍数を基準にすること」**です。
多くの人は「1kmを6分で走る」といったペースを一定に保とうとしますが、このトレーニングではその考え方を捨てます。 なぜなら、同じペースで走っていても、時間が経つにつれて体温が上がり、心拍数は徐々に上昇してくるからです。これをそのままにすると、当初の目的(脂肪を燃やすトレーニング)から外れてしまいます。
私の運用ルール:心拍計を基準に「速度」を調整する
外側の速さではなく、内側の負荷(心拍数)をナビゲーターにすること。これこそが、データを味方につけた、最も効率的なスタミナ強化の方法です。
まとめ:持久力をつけるには、適切な強度設定が不可欠
以前の私は「毎日全力で走らなければ成長しない」と思い込んでいましたが、それではスタミナがつく前に疲弊してしまいました。 スタミナの土台を作るために必要なのは、自分を追い込む全力疾走ではなく、目的に応じた適切な強度での継続なのだと気づきました。
本日のまとめ
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楽なペースで走ることで、脂肪をエネルギーに変える体質が作られる。
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負荷が低いからこそ長時間走ることができ、結果としてトレーニングの総量が増える。
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ペースにこだわらず心拍数を一定に保つことが、スタミナ構築の最短ルート。
「今日はちょっと物足りないかな?」と思うくらいのペースで、じっくりと走る時間を確保してみてください。その適切な強度の積み重ねこそが、あなたをより遠くまで運んでくれるはずです。